ここで挙げている事例は、実際にあったことを基にしています。ただし、すべての現場でこういったことが起きているというものではなく、ひとつの事例として捉えていただき、建築される際の参考となれば幸いです。

― 耐力壁の面材と釘編 ―

■構造用合板に出来た孔
 「構造用合板を留めている釘の大半がめり込んでいるのですが大丈夫でしょうか?」という質問を受けたことがあります。実際にその現場を見たわけではないので、どの程度めり込んでいるのかはうかがい知れなかったのですが、一般的な回答としては、「大半がめり込んでいるのであれば、それはよくありません」となります。
 なぜよくないかというと、説明するまでもないかと思いますが、地震などで力が加わった場合に構造用合板を止める部分の厚みが薄いためパンチングを起こしてしまい、その場で壊れるか、その後の耐力が激減する可能性があるからです。
▲合板釘
 めり込みが起きる原因は、コンプレッサー等を使った釘打ち機を使用し、打ち込み圧の調整を適切にしていないことが挙げられます。なぜ適切な圧力調整がされないかというと、圧が弱い場合は、釘頭の浮きが発生しますが、こうなると再度玄翁(げんのう)で締めなおさなければなりませんので、そうならないように圧を強めにしておいたり、一度設定した圧のまま使い続けたりするといった、ひと手間省こうという考えが働いていると思われます。

打ち込みすぎが問題となるのは
 最近の軸組工法の住宅は、面材を耐力壁としたものや筋かいを使用することで、貫や土壁を使用していた頃の在来工法ではなくなってきています。
 これは、地震を経験するごとに、壁を固めることで対抗する「耐震」という方針が実験等を基に確認され、推奨され、法律的にも整備されてきた過程で変化してきたものといえるでしょう。
 具体的に壁を固める方法として、筋かいを取り付ける方法、さまざまな構造用面材を貼り付ける方法が一般的に採用されています。その中で、特に打ち込みすぎが問題となるのは、構造要素として面材を使用し、その取り付けに釘打ち機を使用するという施工を行う場合です。
 
■耐力壁が変形すると釘はどういう挙動を起こすか
 釘がきちんと打ち込まれた耐力壁で実験を行うと、まず、横架材・柱と面材にズレの力が働き、その際に釘にせん断力が働きます。この時点では、釘の抜けはほとんど発生していません。面材に引かれて、釘がわずかに曲がります。その際に釘頭が面材に若干めり込んだり、頭の部分で変形を起こしたりします。試験体への入力を繰り返すと、釘は少しずつ抜けながら変形を繰り返し許容変形量に達します。
 打ち込み方に問題がある場合、釘が面材端部に打ち込まれていると、その部分の面材の破断が先行します。また、半分ほどめり込んだ釘に関しては釘が変形する前にパンチングを起こして(抜けて)しまい効かなくなります。

■不安のない構造を
 釘のめり込みは、普通の人でも見た目でわかる不安要素です。
 面材耐力壁などの実験では、施工上のばらつきを考慮に入れて、数本の打ち方に問題があっても残りがきちんと打たれていれば想定耐力が出るように設定されているようですが、それは実験上の余裕であり、現場では100%を目指して施工してもらうに越したことはありません。下地材の硬さを考慮して、材ごとにちょっと圧の調整を行っていただければ、きちんとした耐力壁を造れ、加えて、お客さんの記憶に不安を残さないことで、クレーム要素の削減につながると思います。